高速度道路調査会が65歳以上の高齢者を対象に行った高速道路での運転についてのアンケートを見ると
高齢者に、高速道路の運転をためらわせている原因の大きな要因が動体視力の低下にあると考えられます。
高齢になるに従って、動体視力は低下していきます。そして、そのことがどのように高速道路での運転に影響が出ているのでしょう。
高齢者が高速道路を運転しない理由
アンケート結果から、高齢者が高速道路を運転しない理由ベスト3は
1位 自分で運転してまで利用することがなくなった 63.6%
2位 高速道路の運転に自信がないため 24.1%
3位 高速道路はもう危険と思うから 21.9%
アンケートの対象は、以前は高速道路を運転していた人ですから、1位の自分で運転してまで利用することがなくなった背景には、運転が危険だと感じるために本人や家族が運転しない(させない)ようにしているという理由も当然含まれるはずです。
つまり、高速道路を運転しなくなった理由のほとんどは、自分(高齢者)の運転では、高速道路の走行は危険だと感じているということです。
高齢者の高速道路走行に支障が出ている肉体的な原因
高齢者の方の、自己申告による高速道路走行に影響がある肉体的な原因は
1位 走行速度を控える(遅くする)ようになった 76.2%
2位 長時間運転が辛くなった 58.5%
3位 雨天の日は、車の進行方向が見えにくい 55.2%
4位 注意力が低下してきているように感じる 54.1%
5位 暗くなると見えにくくなる 44.3%
6位 何かを見たり意識するのに時間がかかる 44.0%
7位 道路標識や案内を見落とすことがある 42.5%
8位 運転中の動作が遅くなった 41.7%
9位 道路標識や案内板が読みづらい事がある 38.5%
10位 視野が狭くなったと感じる 33.3%
これらを各項目毎に分析すると
走行速度を控える(遅くする)ようになった
これは動体視力が落ちた結果、周りの風景が見えづらくなり、以前よりも走行速度が早く感じる結果、どうしても速度を遅くせざるを得なくなります。
速度が上がれば上がるほど加速度的に体感速度は速く感じます。
その結果、標識が見にくくなったり、車線をキープするのに緊張感が増したり、すぐに疲労を感じるようになります。
安全運転もさることながら、速度を出したくても出せないといったところでしょう。
長時間運転が辛くなった
車の運転はさほど体力を使う訳ではありませんから、肉体的な疲労と言うよりも加齢により集中力が続かなくなった要因も大きいでしょう。
そして、さらに動体視力が低下した結果、周囲の状況を把握するのに、これまで以上に神経を使うことから、疲労の度合いが強いということもあると思います。
雨天の日は、車の進行方向が見えにくい
雨の日は若い人でも視界が悪くなって、運転しづらくなりますが、高齢者が敢えて、この項目を挙げるということは、雨の日の視力の低下が、以前に比べて顕著だということになります。
高齢になると、目に映る画面の濃淡(コントラスト)がハッキリしなくなったりするので、雨によってノイズが入った状態になると、さらにものが見づらくなります。
また、動体視力の低下による視覚情報の減少が、より運転に影響を与えている影響もあると考える事が出来ます。
注意力が低下してきているように感じる
これは文面通り捉えれば、加齢により集中力が低下しますから、当然の感じ方とも言えますが
動体視力の低下により、後ろから近づいてきたりする車の見落としなどが増加する結果、集中力が落ちていると感じる場合も考えられます。
自分では後方を確認したつもりで、走行車線に入ったのに、すぐ後ろに後続車がいてクラクションを鳴らされるといった経験を持つ高齢者の方は多いと思います。
暗くなると見えにくくなる
高齢になると水晶体に濁りが出てきて、目のレンズの明るさが低下します。
そうなると、若い人が感じる以上に、目に映る画面が暗くなって、周りの状況が見えにくくなります。
何かを見たり意識するのに時間がかかる
加齢のために目の玉を動かしている外眼筋や水晶体の動きが悪くなって、焦点を合わせるのに時間がかかるようになることが影響しています。
前方を見て、次にバックミラーに視点と焦点を合わせようとしても結構時間がかかるようになっています。
若いときなら瞬時に視点が移動できたのが、高齢者だとコンマ何秒というレベルですが、視点を移動するのに時間がかかり、特に高速道路ではかなりの距離を空走することになります。
その為に、バックミラーに視点を移す前に、まずは前方の状況をよく確認してから、バックミラーに視点を移す必要があり、ますます、後方を見る頻度が少なくなります。
道路標識や案内を見落とすことがある
集中力の低下もありますが、主な原因は動体視力の低下によるものと考えられます。
特に、周りに他車がたくさん走っていたり、標識が連続して出てきたりすると、視点の移動が間に合わなくなり、焦点が合った頃には通り過ぎていたいという事態も発生します。
運転中の動作が遅くなった
年齢により反射神経や動作が鈍くなることも考えられますが、やはり高速道路の運転では、高速で流れ去る車の前後の視覚情報を処理しながらの操作となりますから、
視力の低下により周囲情報の把握に時間がかかるということも動作が遅れる原因になっている場合も考えられます。
(質問は高速道路運転時の身体機能に関する体験ということで回答を求めていますから、高速道路運転時に顕著だという事を考慮する必要があります)
道路標識や案内板が読みづらい事がある
加齢による動体視力の低下により、道路標識や案内板が見えづらくなります。
特に読みづらい文字が書いてあったり、色々な事が書いてあったりすると、目で全部を追いかけることが難しくなります。
視野が狭くなったと感じる
加齢により視野は狭くなるのが普通です。
見える範囲が狭まり、前方の一点に近い所だけがクリアに見えるようになります。
通常は自分で自覚する事は少なく、気が付きにくいですが、特に高速道路では、若い人でも速度の増加に伴い視野は狭くなります。
まして、高齢者は動体視力が低下している分、なおさら、前方中心以外の周囲の視界部分が見えづらくなっていると考えられます。
動体視力の低下が高速道路運転の大きな支障になっている
アンケート調査の結果から、加齢による注意力や反応時間の低下も高速道路運転の支障になっていると言えますが、
もっとも大きな問題は、動体視力の低下により、高速道路の運転を危険に感じていることが伺えます。
ヒヤリハット体験アンケート結果
高齢者(65歳以上の運転者)への高速道路運転時のヒヤリハット体験を聞いたところ
1位 他の車に追い越され時 40.2%
2位 他の車を追い越した時 26.1%
とダントツに多く見られました。
同アンケート調査の分析では、ヒヤリハットの原因は必ずしも他者の責任ではなく、自身が原因である可能性がある場合も多いとしています。
ということは
追い越ししてきた車に気が付かなかったり、他車との相対速度を見誤ったりという動体視力の低下に起因するヒヤリハットもかなり存在するものと思われます。
ヒヤリハットの中でも高齢者に特に多いのが、車線変更したら後ろから車が来ていて事故になりそうになったというものです。
高齢者の方の中には、高速道路で後続車との車間を充分把握して前車の追い越しをかけたつもりなのに、後続車からクラクションを鳴らされたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
まとめ
年齢が上がるに従って、動体視力が低下し、高速道路での運転がきつくなるし、更に危険度も増してきます。
そうはいっても、車社会の現代において、車で高速道路を走らなければならないことも多いですし、車で高速道路を走れれば、旅行や趣味のことなど人生の楽しみも広がります。
普段から視力の低下、特に動体視力の低下に注意して、なるべく長く人生を謳歌したいものです。
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