野球の打率を上げたかったら、まずはスポーツビジョンを鍛えるのが先決です。
いくら、素晴らしいバットスイングをしても、バットコントロールが上手であっても、投手の投げたボールが見えていないのであれば、バットにボールは当たりません。
ボールをしかり目で捕らえ、コースを正確に見極め、ボールの未来位置を予測する。
ここまでが出来ていなければ、いくらバットスイングが正確でも、ボールの位置と、スイングしたバットの芯の位置はずれていて、しっかりボールを打ち返すことは出来ません。
では、野球のボールを正確に捉えるスポーツビジョンとはどのようなものなのか、いかにバッティングにおいてスポーツビジョンが重要なのかについて説明します。
目でボールを捉える事の重要性
私たちが野球をやっているときに必要な情報というものは、大部分は視覚から得られています。
打球の音とか、味方の声なども参考にすることもあるでしょうけれども、ほとんどが目から入る視覚を情報源にしています。
当たり前ですが、目をつぶっていたらほとんど何も出来ないはずです。
野球のバッティングでも監督やコーチのアドバイス、過去の経験や、相手投手の様子などの情報も大切ですが、
最終的には、相手投手の投げたボールをいかに正確に目で捉えて、そのスピードやコースを把握し、予測したミートポイントに正確にバットを振り出すことが、ジャストミートにつながり
ジャストミートの確率=打率に直結します。
バッティングの練習で、バットスイング(素振り)の練習を行いますが、バットスイングを正確にしたり、スイングを鋭くしたりする効果はありますが、バットスイングの練習を何万回やっても、打率の向上には直接的には繋がりません
もちろん、いくらボールをしっかり目で捉えても、スイングがへろへろだと、しっかりミートできないという事はありますから素振りの練習は重要ではあります。
野球のバッティングに必要なスポーツビジョン
スポーツビジョンとは、各種のスポーツを行っているときに、周りの状況を把握したり、ボールの動きを見る能力のことをいいます。
一般的な視力は、止まっているものの形を捉える静止視力のことをいいますが、静止視力だけでなく様々な周りの状況や、相手の選手、ボールの動きを的確に把握できなければ、競技において良いパフォーマンスを上げることは出来ません。
というと動体視力のことかと考える人もいるでしょう。
しかし、スポーツビジョンには静止視力や動体視力ばかりでなく色々な要素があり、その色々な要素の中でもバッティングに特に重要な要素というものがあります。
スポーツビジョンに含まれる8つの能力
1.静止視力
止まっているものを見る能力で、一般的に視力といえば静止視力のことを言います。
いくら他のスポーツ視力が優れていても?静止視力が悪くて、もの自体がよく見えていないのであれば問題外です。
まずは、静止視力が良いことは他のスポーツビジョンの要素にも影響してきます。
2.動体視力
動いている物を見る能力です。
静止視力が良くても動体視力になると極端に視力が落ちる人もいます。
野球のバッティングにおいても投手の投げたボールを目で正確に捉えるためには必須の能力になります。
この、動体視力は次の2つの能力に分割することが出来ます。
KVA動体視力(縦方向動体視力)
遠くから近くに、あるいは近くから遠くに直線的に動いているものを見極める能力です。
投手がボールを投げた瞬間には、特にこの能力が重要になってきます。
DVA動体視力(横方向動体視力)
目の前を上下左右に動くものを見極める能力です。
野球のバッティングでもボールがホームベースに近づいていくにつれ、DVA動体視力が重要になってきます。
スポーツが上手くなるには動体視力が重要、動体視力とは?鍛え方は?
3.周辺視野
移動または静止するものを見ると同時に周りの状況も目で捉える能力です。
バッターでいえば、ヒットエンドランの時にランナがスタートを切っているのを視界の端に捉えながら、ボールを見てヒッティングするって感じでしょうか、
野球のバッティングそのものにはあまり重要で無いかもしれません。
眼球や水晶体の動き
眼球や目の水晶体を物理的に動かし、移動するものに対して素早く正確に視線を追従させる能力です。
両眼がバランス良く、目標に対し視線を素早く動かし、追従できるかが重要です。
また、視線をスムーズに動かすだけでなく、水晶体(目のレンズ)のふくらみを素早く変化させて、動いている物に焦点を合わせられることも重要です。
5.コントラスト感度
明暗の微妙な色合いの差を見極める能力です。
投手が投げた白いボールをくっきり見る事が出来るかどうか
コントラスト感度が悪いと、グランドの土の色が明るい色だと、その中にボールが埋没して、ボールをハッキリ識別することが出来ず、他の視力にも悪影響が起こってしまいます。
極端なことをいえば、霧の中でボールを見るような状態になってしまいます。
6.深視力、立体視力
距離感、位置関係を見極める能力で、ボールなどを立体的に見ているかどうかです。
野球やサッカーなどの球技では、ボールの位置関係の把握や空間認識力が求められるため、非常に重要な能力とされています。
私は学生時代には静止視力が両目とも1.5あり気が付かなかったのですが、左右の視力が微妙に異なり
右目はわずかに近視で水平方向の乱視
左目はわずかに遠視で垂直方向の乱視
(社会人になって発覚)
このため深視力(立体視力)に問題があり、見えているつもりで、実際はボールの位置関係を正確に捉えていませんでした。
このため、自分ではしっかりボールを目で捉え、ジャストタイミングでバットを振っているのになぜか空振りするということが時たまありました。
おそらく、自分の目からの方位が変わらない方向へのボールの変化に追従できていなかったものと思います。
守備において、何でもない真正面の飛球をぽろりと落としてしまうような選手は、もしかしたらこの深視力(立体視力)に問題があるのかもしれません。
7.瞬間視力
一瞬のうちにできるだけ多くの視覚情報を正確に把握する能力です。
サッカーやバスケットボールなどでは、瞬間瞬間で変化する敵味方の選手の位置などを把握する能力が求められますが
野球のバッティングでは投手の投げたボールをしっかり目で捉え、正確なボールの位置とスピードなどを把握する能力が求められます。
野球の打率を上げるなら瞬間視を鍛えないと、トレーニング効果は上がらない
目と手の協応動作
自分の見ている視界に合わせて、身体を動かす能力です。
バッティングで言えば自分の見ているボールの位置にタイミングを合わせて正確にバットの芯を持っていく能力です。
いくら目で正確にボールを捉えていても、スイングしたバットをスムーズのその位置に持って行けなければ、結局ボールをしっかりミートすることは出来ません。
自分では、自分の見ているボールに位置にバットの芯を持って行ってるつもりでも、実際に外れた位置にバットが動いているという事があります。
この能力については、バットスイング(素振り)やトスバッティング等のトレーニングによって向上させることが可能です。
スポーツ競技別に必要なスポーツビジョン能力
表を見てもらえれば分かりますが、野球のバッティングにおいては、ほとんど全てのスポーツビジョンの要素が最大限に発揮できなくてはいけません。
そのほかのスポーツではやはり、テニスがラケットでボールを打ち返すという、野球のバッティングと同じような動きをするので、やはりスポーツビジョンのほとんど全ての要素が重要とされています。
ただし、テニスの場合は、ボールを打ち返すために身体の動きが大きいのに対して、野球は自分の構えているところにボールが投げ込まれるという特徴があります。
また、テニスラケットは打撃面が比較的広いのに対して、野球の場合はよりピンポイントでボールに当てる必要があるという違いがあります。
とはいうものの、テニスの場合は正確に狙ったところにボールを打ち返す必要があり、その面では、強打するよりも、ラケットをコントロールする必要がありますが
野球の打撃の場合は、より強く撃ち返すという点に重点が置かれます。
野球のバッティングにおいてスポーツビジョンの能力が重要
プロ野球のレギュラー選手はスポーツビジョンに優れている
いくら素晴らしい反射神経を持っていても、いくら素晴らしいパワフルで素晴らしいスイングをしていても、投手の投げたボールをしっかり目で捉えることが出来なければ意味がありません。
良くある
「バットに当たればホームランなんだけどなあ・・・」
というやつで
当たればホームランと言っても50回や100回に1回では話になりません。
あるプロ野球の球団が取ったデータですが
入団時のスポーツビジョンとその後の活躍の関係のデータでは(平均点数)
レギュラー 36点
1軍 35点
1軍半 34点
戦力外 32点
というデーターが出ています。
投手は別として、守備要員というのは特殊な例で、枠も限られています。
野球で活躍しようと思えばどうしてもバッティングの能力
=スポーツビジョン(ボールをしっかり目で捉える能力)
が重要という事になります。
極端なことを言えば、非力なバッターで、やっとこさバットをスイングしているレベルでも、常に確実にミートできる能力(視力)を持っていれば、内野の頭は越せますから、それなりの打率は残せるので、レギュラーとして活躍できるということになります。
スポーツビジョンが発達するのは20歳まで
人間は6歳のころに視力が完成し、その後スポーツビジョンが伸びていきます。
そして、小さいころからスポーツをしている子どもほど発達していることが明らかになっており、発達期に、スポーツをすることでスポーツビジョンが鍛えられるということを示しています。
しかし、20歳のころをピークとして徐々に衰え始め40歳代から急激に衰え方が早くなり
60代くらいにはがくんと能力が低下します。
(高齢ドライバーの事故が増える一因ともなっています)
結局20歳のころをピークとして、スポーツビジョン能力は低下していきます。
といっても、20歳以降、スポーツビジョンを鍛えても無駄だと言うことでは無く、何歳になってもスポーツビジョンは鍛えることで、低下のスピードを抑えることは可能です。
逆に言えば、スポーツ選手(バッター)としての限界は6歳から20歳の間にいかにしてスポーツビジョンを鍛えて向上させるかにかかってきます。
まとめ
野球のバッティングにおいて、いくら素晴らしいスイングをしていても、投手の投げたボールに正確にバットの芯をぶつけなければ、ヒットにはなりません。
野球のバッテイングにおいて、打率を上げるためには、スポーツビジョンを鍛えて、ボールをしっかり目で捉える必要があります。
スポーツビジョンは6歳から20歳の間に能力が向上し、その後は低下するだけです。
一流の野球の選手になるためにはこの期間にいかにスポーツビジョンの能力を上げられるかにかかっているといっても過言ではありません。
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