双眼鏡の選び方はどうしたらよいのでしょう。
必要があって双眼鏡を購入しようと思うけれども、どういう双眼鏡を選んでいいのか分からない、そもそもカタログに書いてあるスペックや仕様もイマイチ何が書いてあるのか分からない。
そういう人の為に、双眼鏡の性能の見方や選ぶ時に何を重視して選べば良いのかについて解説します。
また、双眼鏡を持っていく場所、シーンごとにも重視する性能は変わってきます。
コンサート、アウトドア、旅行など様々なシーンで、どのような双眼鏡を使うのが効率的で便利なのかについても分かりやすく説明します。
双眼鏡の性能、カタログのスペックの見方や比較の仕方はどうすれば良いの
双眼鏡の基本的な性能の意味と見方
カタログや販売サイトにも色々書いてあるけど、そもそも何を言っているのか理解出来ないことも多いと思いますので、双眼鏡の基本的な性能の意味と見方について説明します。
倍 率
双眼鏡で見たものがどれだけ大きく見えるかを表します。
100m先の物を見た時に10mの距離から見たのと同じ大きさに見える場合は
100÷10=10倍となります。
倍率が大きければ大きいほど、より遠くの物をより大きく拡大して見ることができる反面、倍率が大きすぎると、比較的近くのものが見えにくくなったり、視界に対象物を合わせる事が困難になったり、手ぶれの影響が大きくなったりします。
特殊な用途のものを除いて、一般的には8~18倍程度のものが多く市販されています。
対物レンズ有効径
双眼鏡の目をあてるのとは反対側のレンズ
大きくなるほど集光力が高くなり見たものをクリアに見ることができますが、対物レンズが大きくなればなるほど双眼鏡自体が大きくなり、持ち運びなどに不便になります。
ヒトミ径と明るさ
ヒトミ径=対物レンズ有効径÷倍率
で計算される数値で、ヒトミ径が大きいほど双眼鏡で見た像が明るく映ります。
双眼鏡の明るさはヒトミ径×ヒトミ径(ヒトミ径の2剩)であらわされます。
例えば
対物レンズ径 倍率
A 50mm 10倍
B 30mm 8倍
の2つの双眼鏡が有った場合
Aのヒトミ径は 50÷10=5.0 明るさ 5.0×5.0=25.0
Bのヒトミ径は 30÷ 8=3.75 明るさ 3.75×3.75=14.1
となり、Aの双眼鏡の方が明るく見えることになります。
参 考
人間の瞳孔の直径は
昼間 2~3mm
夜間 7mm 程度で
ヒトミ径が瞳孔の直径よりも大きければ裸眼で見たのと同じように、双眼鏡の映像も見ることができますが、ヒトミ径の方が小さいと、実際よりも暗く見えてしまいます。
ですから昼間に使用するのであればヒトミ径が3mm程度以上のものであれば問題無いですが、夜間に使用するものであれば、ヒトミ径は7mm以上ないと、裸眼で見たよりも暗く感じ、見づらくなると思います。
実視界
双眼鏡を固定したままで見ることのできる視界の範囲をいいます。
角度が大きいほど広い範囲を見ることができます。実視界が狭いと遠くの物を探す時に、なかなか双眼鏡の実視界の中に入ってこなくて目標物が見つからないということになります。
見かけ視界
実視界に双眼鏡の倍率をかけたものです。
例えば100mの距離で10倍の望遠鏡で対象物を見た場合、10mの距離から見た大きさに見えるという事ですから、仮に10mの位置から見ているとすればものすごく大きな範囲が見えているということになります。
実視界同様、見かけ視界も、範囲が狭いと見える範囲が狭くなり、対象物が見えづらくなります。
逆に、倍率が高く見かけ視界が広いと、迫力ある画面となります。
計算式
見かけ視界=2×ATAN(倍率×TAN実視界)
例:倍率8倍、実視界7.0°の双眼鏡の見かけ視界は
2×ATAN(8×TAN3.5°)=52.1°
1000m先視界
1000m先の対象物を、双眼鏡を固定して見ることのできる範囲(実視界)をm(メートル)で表したものです。
計算式
1000m先視界=2×1000m×TAN(実視界÷2)
アイレリーフ
双眼鏡のレンズから入って来る画像がしっかり像を結ぶように見える目の位置までの距離です。
アイレリーフの距離が長い双眼鏡はのぞきやすく、長時間見ていても目が疲れませんし、メガネをかけたまま使用出来るというメリットが有ります。
最短合焦距離
ピントが合う最短距離で、これが短ければ短いほど近くの物がはっきり見えるということになります。
最短合焦距離が短い双眼鏡は美術館や博物館で、近距離から展示物などを大きくはっきり見たい場合に便利です。
ポロプリズム式
一般に市販されている双眼鏡の多くは対物レンズ、接眼レンズとも凸レンズが使われているので、そのままでは像が逆さまになってしまう不具合があります。
このため反転した像を元に戻すためにプリズムが採用されており、このような双眼鏡をプリズム式双眼鏡といいます。
そしてこのプリズムの方式によってポロプリズム式かダハプリズム式のどちらかが採用されている場合がほとんどになります。
詳しい説明は省きますが、ポロプリズム式は対物レンズに入ってきた像を2つのプリズム(ポロプリズム)によってZ型に反射させ接眼レンズに送られます。
メリット
光学性能に優れています。
デメリット
光軸を一直線に配置出来ないため、小型軽量化が難しくなります。
ダハプリズム式
一つに組み合わせたプリズム(ダハプリズム)を使用したタイプで、光軸を一直線に配置することが出来ます。
メリット
小型・軽量化しやすい
デメリット
光学性能を向上させるためにはコストがかかり、値段が高くなります。
ガリレイ式
接眼レンズに凹レンズを使っているためプリズムを使う必要が無く、構造が簡単で安価に作る事が出来ます。
ただし実用としては倍率が4倍程度のものしか作れないというデメリットがあります。
双眼鏡を選ぶ時に重視する性能やスペックのポイントは
シーンや用途別に探す
双眼鏡といっても、色々な用途や、目的とする使用シーンがあります。
昼間使うのか夜暗い時に使うのか
とにかく遠くを見る時に使うのか比較的近くを大きく拡大したいのか
屋外で使うのかコンサートホールなどの室内で使うのか
双眼鏡を使って見たいものはどの程度離れているものなのか
とにかくしっかりと見たいので、性能重視で選ぶのか、あるいは旅行などに持っていくので携帯性を重視するのか
対象は動く物なのかあまり動かない物なのか
など、どのような目的でどのような場面で使うのかシーンや用途をはっきりさせてから購入しないと中途半端なものを購入してしまって、あまり役に立たなかったということにならないように気を付けましょう。
倍率はどのくらいにするのか
気軽に手持ちで見るなら一般的には倍率は10倍までくらいが適当です。
それ以上の倍率になると双眼鏡を固定する三脚などがないと手ぶれが激しくなりますし
見える範囲が狭い、画面が暗いなどのデメリットが出てきます。
対物レンズ有効径
対物レンズ有効径が大きければ大きいほど集光力が大きく像がクリアに見えます。
ただしレンズが大きくなればその分、双眼鏡全体も大きくなり、携帯するには不便になります。
薄暗いところで使うのが目的なら
ヒトミ径(明るさ)の数値が大きいほど双眼鏡で見た時の像が明るくなります。
薄暗いところでは、人間の瞳孔の直径は7mmくらい(昼間だと2~3mm)になりますから、双眼鏡のヒトミ径はより大きいほど、暗い所でも活用出来ます。
夜間などに使う場合はヒトミ径が4mm程度以上のものが適当です。
倍率を低めに抑えて、対物レンズ(見るのとは反対の方のレンズ)の直径(対物レンズ有効径)が大きいほどヒトミ径や明るさは大きくなります。
注:星空などを眺めるので有れば問題無いですが、肉眼でもよく見えない完全に暗いところを見るのに、双眼鏡を使うのは難しいです。
そういう場合は、双眼鏡でも暗視装置のついたものを選ぶ必要があり、暗視鏡については別の記事で解説したいと思います。
広い範囲を見たい
コンサートやスポーツ、あるいは星空など広い範囲を見たい場合にはなるべく広角の双眼鏡が良いですね。
その為には、見かけ視界のなるべく大きな物を選びましょう。
メガネをかけたまま使用したい
乱視などでメガネをかけたまま双眼鏡を使用したい人は、接眼レンズと目の間にメガネが入るアイレリーフが15mm以上の物を選ぶようにします。
手ぶれ防止機能
手ぶれを防止するためには、双眼鏡を持つ両手の脇をしっかり締めて、ぐらぐら動かないようにすることが大切ですが
僅かな手の動きで、双眼鏡に映る遠くの像は大きく動きますから、倍率の高い双眼鏡を使う場合は手ぶれ防止機能があった方がストレスなくレンズをのぞくことが出来ます。
あるいは手ぶれ防止機能に加えて三脚や一脚などカメラを固定するグッズを一緒に使った方が良い場合も有るでしょう。
防水機能
屋内で使用する目的であれば、あまり必要でないですが、屋外で使用する場合は、雨や水がかかってしまったことを考えて、防水機能のあるものを選んだ方が良いでしょう。
レンズ性能
レンズの性能によって見える像のシャープさが全然違ってきます。
出来るだけ、信頼の置けるメーカーのものを選んだ方が良いでしょう。
レンズの性能はある程度値段と比例している部分もあります。
極端に安価なものあるいは定価より安く販売されているものは、粗悪なものの可能性が高いです。
センターフォーカスとインディビジュアルフォーカス方式
双眼鏡で対象物を見る場合に、両目で見て一つの円になるのですが、この時左右のピントを合わせる必要があります。
センターフォーカスタイプの場合、中心軸にあるリングで素早く両目の焦点を合わせることが出来ます。
ただし、左右の目の視力が異なる場合、最初にピント調節リングを動かし視度調節リングのない方の目で合わせます。合ったら、視度調節リングを動かしピントを合わせます。
一度合わせたら、視度調節リングを動かさなければ、センターの調節だけで近距離から遠距離まで、ピントが合うはずです。
インディビジュアルフォーカス方式の場合、左右それぞれの視度調節リングで焦点を合わせておく必要がありますが、防水性、防塵性、防湿性に優れています。
カタログや通販ショップの表示の見方
双眼鏡の場合、カタログや通販ショップの表示に省略した書き方がしてあることがあり、始めて見ると何が何だか分からない場合も有ると思いますので、表示の見方について説明します。
例
8×21 7.0
倍率8倍、対物レンズ有効径(レンズの大きさ)21mm、実視界7.0°
その他
実視界、明るさ、アイレリーフ、ヒトミ径、1000m先視界などは、前の方で説明したとおりです。
シーン別の双眼鏡の選び方、どういうときにどういう双眼鏡を選べば良いの
観劇、コンサート
倍率:6~8倍
あまり倍率を高くしても見にくくなるだけです。
会場が暗い場合もあるので明るい物を選んだ方が良いでしょう。
東京ドームなど広い会場で、対象から離れている場合は、8~10倍くらいのものでも良いと思います。
美術館、博物館
倍率:4~8倍
あまり遠くの物を見ると言うことはないと思いますので倍率は高くなくても良いでしょう
周りの人に迷惑にならないよう、また携帯に便利なように、性能よりも小型、軽量を重視して選ぶようにします(200~300g程度)
注意するのは、美術館や博物館であれば、近距離から見る場合も多いですから、最短合焦距離(ピントを合わせられる最短距離)が近い物を選びます。
例えば2m程度で展示品を見たいのであれば、最短合焦距離が2m以下の物を選ぶようにします(出来れば50cm~2m程度)
また、美術館などでは照明を暗くしている場合が多いですから、ヒトミ径や明るさが大きい物を選びます。
ヒトミ径3~5mm、明るさが9~25程度を目安
旅行
倍率6~8倍
持ち運びの邪魔にならないよう、携帯性を重視します。
カバンの中などに収まるようコンパクトで本体の重量は300g程度以下に抑えた方がよいです。
スポーツ観戦
倍率:6~10倍
スポーツ観戦の場合、観客席から選手まで離れている場合が多いので、倍率は高めの方が良いでしょう。
ただし、サッカー観戦などで、比較的広い場面を見たい場合は、倍率よりも見かけ視界の広いものを優先して選ぶ場合も有ります
日中、明るい場所で行われるスポーツであれば明るさはあまり気にしなくても良いです。
アウトドア、レジャー
倍率8~10倍
登山やトレッキング、旅行などで使用するなら小型軽量タイプがおすすめです。
一般的に倍率10倍くらいまでのものなら、結構小型軽量のものがあります。
あるいはキャンプなどで、あまり持ち運びのことは考えなくても良いというのであれば、より明るく綺麗な像が見られる対物レンズ有効径の大きなものでも良いでしょう。
屋外で使用するので防水になっているかどうかも選択のポイントです。
バードウォッチング
倍率:8~30倍
一般的なトレッキングなどと兼ねて持ち歩くのならば8倍程度でも良いと思います。
ただし、バードウォッチングがメインで、珍しい種類や、近くに寄ることが難しいものが対象の場合は、高い倍率が必要になってきます。
高倍率の双眼鏡を使用する場合は、三脚と三脚に双眼鏡を固定するビノホルダーが必要になってきます。
星空を見る
倍率:星空をながめる6~8倍、天体観測10~30倍
とにかく明るいもの(ヒトミ径の大きいもの)を選びます。
対物レンズ有効径が40mm以上のものが良いでしょう、またレンズの善し悪しが見え具合に大きく関わってきますので、レンズの品質の良い物を選ぶのもポイントです。
まとめ
使う分には便利で簡単な双眼鏡ですが、いざ双眼鏡を購入しようと思うとどういうものを選べば良いのかさっぱり分かりません
カタログを見てもちんぷんかんぷん
そういう人も多いかもしれませんが、基本的な性能や見方が分かれば、
様々なシーンでどのような双眼鏡を選べば良いのかが分かってきます。
それぞれの使い方にあわせて、最適な双眼鏡を選べれば良いですね。
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